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売上高当期純利益率とは、配当の原資となる当期純利益の水準を見る指標
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はじめに
当期純利益は前期の繰越利益と合算され未処分利益となり、この未処分利益が役員賞与や株主配当金などの原資となるため、株主にとっても関心の高い利益だといえます。この当期純利益と売上高の比率をみるのが売上高当期純利益率です。そこで今回は売上高当期純利益率について詳しく見ていくことにします。
当期純利益とは
当期純利益の求め方
当期純利益といえば税引前と税引後の両方が当てはまりますが、日本では一般に税引後を指すことが多いようです。当期純利益は経常利益から特別損益を加減し、法人税・住民税・事業税を控除し、法人税等調整額を加減して求めます。経常損益が企業活動上経常的に発生するものであるのに対し、特別損益はまれにしか発生しないものが当てはまります。固定資産売却損益や転売以外の目的で取得した有価証券売却損益、災害損失などが該当します。
当期純利益は前期繰越利益と合算され当期未処分利益となり、利益準備金、別途積立金、株主配当金、役員賞与金などの原資として処分されます。
当期純利益の計算過程
以下の図は売上高から売上原価や販管費、特別利益などが引かれ当期純利益が求められるまでを表したものです。まず売上高から売上原価が引かれて売上総利益が求められ、さらに販売費・一般管理費が引かれると営業利益となります。そこから営業外損益が引かれて経常利益となり、特別損益が引かれて税引前利益に、最後に法人税等引かれて当期純利益となります。
売上高当期純利益率とは
売上高当期純利益率の計算式とは
それでは売上高当期純利益率とはどのようなものなのでしょうか。まずは計算式を紹介します。計算では当期純利益を売上高で割って求めます。
売上高当期純利益率の使い方
特別損益と売上との関連が低いこともあり、売上高当期純利益率も指標としてそれほど重要視されてはいません。利用する場合は同業他社との比較や自社の過去の実績との比較が有効でしょう。
売上高経常利益率と売上高当期純利益率とを比べてみて、その差が大きいときは特別損益の内容にも注意が必要です。
売上高当期純利益率を使って企業分析
タイヤ・ゴム業界大手3社を分析
それでは実際に売上高当期純利益率と売上高経常利益率を使って企業分析を行ってみましょう。今回はゴム・タイヤ業界大手3社を比較してみます。数値はいずれも2018年度のものです。ブリヂストンと住友ゴムと東洋タイヤの3社の数値を比較します。
ちなみに住友ゴムは連結決算では日本基準ではなく国際会計基準を採用しているため、経常利益にあたるものがありません。そのため連結ではなく日本基準を採用している単独決算での数値を掲載しています。
各社の売上高経常利益率と売上高当期純利益率は?
それでは実際に3社の売上高経常利益率と売上高当期純利益率を見ていきましょう。ブリヂストンと住友ゴムは売上高経常利益率と、売上高当期純利益率にそこまで大きな差はありません。一方で東洋タイヤは売上高経常利益率は3社とさほど変わらないにもかかわらず、売上高当期純利益率の数値のみ低くなっています。

これは東洋タイヤの特別損益の中身に大きな原因があります。東洋タイヤは2015年に免振ゴム偽造問題を起こしており、4年たった2018年度でも製品補償対策費や製品補償引当金繰入額などの特別損失が発生しています。その額は175億円にもなります。経常利益は383億円ですが、特別損失により利益が大きく減少しているわけです。
このように売上高当期純利益だけでは本来の企業の収益力が見えにくくなることもあります。売上高経常利益率と売上高当期純利益率の両方の指数を見ることで、どのような問題が潜んでいるかを探る手掛かりにもなるわけです。
まとめ
今回は売上高当期純利益率について見ていきました。売上高当期純利益率は、配当の原資である当期純利益の水準を見る指標であり、投資家にとっても関心の高い指標の一つです。
ただ当期純利益には経常的に発生した損益ではない特別損益が加減されています。そのため経常的な収益力である売上高経常利益率とも比較し、当期純利益の額が特別損益による突発的なものなのかどうかの確認も重要だといえます。
※参考資料
これならできる!経営分析
経営分析の基本
経営分析の考え方・すすめ方
※実践編
この記事を書いた人

kain
経営分析のススメ管理人のkainと申します。2013年よりサイトを運営しています。長い投資実績と16冊の参考書籍をもとに、企業の収益性、安全性、活動性、生産性、成長性に関する分析手法に関する記事を多数執筆。
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最終更新日 2019/05/17
公開日 2006/09/17
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