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固定資産回転率(回転期間)とは



固定資産回転率(回転期間)とは



はじめに

固定資産は金額が大きくなりがちで、また流動資産とは違い回収も長期にわたるため、無駄の入る余地が高いのも特徴です。そこで固定資産に無駄がないか、しっかりと売上につながっているかどうかを見る指標の一つとして固定資産回転率をとりあげます。

今回は固定資産回転率とは何か、その意味と計算式、固定資産回転率の見方などを見ていき、さらには各業界の固定資産回転率の平均なども調べていきます。






固定資産回転率とは

固定資産が有効活用されているかを見る

固定資産回転率とは固定資産と売上高の比率で、売上高が固定資産の何倍かを見ることで、固定資産に無駄がないかを、固定資産を有効活用してしっかりと売り上げにつなげているかどうか見る指標です。固定資産回転率の計算式は以下の通りです。

固定資産回転率の計算式


過剰な設備投資になっていないかどうかを見る

古来業績不振の原因の一つに過剰設備投資が挙げられます。固定資産回転率では過去の固定資産への投資が過大ではないか、適正な範囲内で収まっているかなどを判断する指標として用いられます。



固定資産回転期間とは

固定資産回転期間の求め方

固定資産回転期間とは固定資産回転率と同様、固定資産を有効活用しているのかを見る指標です。求め方は固定資産を1日の売上高で割って求めます。何日分の固定資産(設備)があるのかがわかります。計算式は以下の通りです。

固定資産回転期間の計算式


固定資産回転期間ではイメージしづらい

棚卸資産回転期間は何日分の在庫(棚卸資産)があるのかを見る指標ですが、こちらは日数で言うほうがイメージしやすいです。一方で固定資産回転期間で何日分の固定資産(設備)があるといわれても、なかなかぴんとは来ません。それよりも固定資産回転率で固定資産の何倍の売上高があるといったほうがイメージしやすいので、固定資産回転期間よりも固定資産回転率のほうが使われることが多いです。




固定資産管理の重要性

固定資産の額の多い企業は特に重要

固定資産は会社の商品や製品を作るのに欠かせないものが多いです。例えば製造業であれば、工場や機械装置、各種備品など、商品を仕入れて販売する商業では商品を保管して置くための倉庫や営業のためのコンピューターなどです。

特に会社の資産の中で固定資産の割合の高い製造業などでは、その金額が適正であるかどうかを見ていくことは非常に重要になります。


回収の長期化でチェック漏れも起きやすい

固定資産は投資の回収が長期に及ぶためしばしば不良資産を抱え込みがちです。不良資産は現金を生み出すこともなくただ滞留するのみです。流動資産は資金の回収が早いためそのよしあしも頻繁に判断され、無駄が入り込む余地が少ないといえます。それに対して固定資産はその回収が長期に及ぶため、その判断も難しくまたチェックにも隙が生じがちです。そのため無駄な固定資産がたまりやすいというわけです。

固定資産のなかでも特に投資等に無駄が生じやすく中でも会員権など付き合いで所有しているものもあるため、その必要性については検討が必要でしょう。


無駄な資産を価値ある資産へと振替え

無駄な資産は資金を生み出しませんので、早めに処分して価値ある資産へと振り変える必要があります。無駄な資産は概して時間の経過と共にその価値も減少して行くものです。放って置けば換金価値までどんどんと減少して行きます。






固定資産回転率の見方

売上高や固定資産の額に問題がないかを見る

固定資産回転率を見てその数値が悪化した場合、しっかりと売上高につながっていない無駄な固定資産があるのか、もしくは売り上げを十分に上げれていないなどの理由が考えられます。


固定資産を分類して検証

無駄な固定資産の有無を検証する場合は固定資産の中身を一つずつ見て行く事が大切です。そこで以下に固定資産の内訳を示します。まず固定資産は有形固定資産、無形固定資産、投資等の3つに分類できます。中でも金額的にも大きくて重要なのが有形固定資産です。

有形固定資産とはその名の通り形のある資産のことで、以下のような資産が該当します。

有形固定資産
土地、建物、構築物、機械装置、工具、器具、備品など

無形固定資産とは形のない資産のことで、以下のような権利などが該当します。

無形固定資産
特許権、賃貸借権など

最後は投資等です。こちらは現金で回収するのに1年以上かかる債権や証券などが該当します。

投資等
長期貸付金、投資有価証券、子会社株式、会員権など



固定資産回転率の目安と業界平均

業界平均との比較が有効

固定資産の適正水準は業種や業界、また各企業によっても異なります。ただ自社の過去の事績や同業種の平均値などは一つの目安となります。そこで各業界の固定資産回転率の業界平均について見ていくことにします。


固定資産回転率の業界平均

2017年度の全産業の平均値は1.71回となっています。非製造業が1.67回なのに対し、製造業は1.83回と固定資産回転率は高くなっています。大規模な生産設備などが必要な製造業の方が固定資産が多くなる分、非製造業よりも固定資産回転率は低くなるかと思いきや、実際はそうではないようです。

固定資産回転率の業界平均(2017年)


固定資産回転率の高い業種

それぞれの業種別にみてみると建設業界が4.11回とかなり高い数値となっています。建設業界は保有する設備といえば建設機械などが中心で、大規模な建物や土地、生産設備などを抱えているわけではありません。そのため固定資産に対して売上高の数値が高くなります。

また小売業の3.57回、飲食業の2.8回も固定資産回転率の高い業種だといえます。小売業は商品を仕入れて販売することがメインなので、大規模な生産設備が必要なわけではありません。飲食業も同様に仕入れた商品を調理して販売することがメインです。どちらも固定資産に対して売上高が大きくなるので固定資産回転率も高くなります。


固定資産回転率の低い業種

一方で電気業界は固定資産回転率が0.65回と特に引くに、宿泊業界も1.22回と低い数値となっています。電機業界も宿泊業界も売上高のメインは、電気代や宿泊費など手数料的なものです。どうしても商品の取扱高が売り上げとなる小売業や、製造したものを販売する製造業と比べると売上高の比率は低くなります。その結果固定資産回転率の数値も低くなるわけです。



まとめ

今回は固定資産回転率についてみていきました。固定資産は企業の生産活動において大きな役割を担いますが、回収が長期化するため、無駄な資産とならないよう、逐一チェックが必要な資産だとも言えます。固定資産の水準をチェックする指標として固定資産回転率は有効な指標の一つだといえますす。

固定資産に無駄が見つかった場合は、スリム化したり別の資産へと振り替えたりなどして、売上高につながるような対策をこうじることが求められます。固定資産回転率の数値は業界平均や自社の過去のデータなどを参考に判断するといいでしょう。




※参考資料
経営分析の基本
経営分析の考え方・すすめ方
経営分析入門―ビジネス・ゼミナール
戦略思考で読み解く経営分析入門
財務省・法人企業統計調査


※実践編


この記事を書いた人

kain

kain

経営分析のススメ管理人のkainと申します。2013年よりサイトを運営しています。長い投資実績と16冊の参考書籍をもとに、企業の収益性、安全性、活動性、生産性、成長性に関する分析手法に関する記事を多数執筆。

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最終更新日 2019/12/29
公開日 2007/05/14




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