![]() 営業キャッシュフロー対流動負債比率、対長期負債比率 | ||
営業キャッシュフローは企業の本業でのキャッシュを稼ぐ力を見るものです。くわしくは営業キャッシュフローの見方、計算の仕方、直接法と間接法をご覧ください。今回は営業キャッシュフローとその他の項目との関係から企業の安全性を見る指標を取り上げます。 本来企業の安全性を見る場合は流動比率や当座比率などを使います。流動比率とは流動資産と流動負債の比率を見るものです。流動負債は短期で支払いの来る負債なので、その返済手段には短期で現金化される流動資産がふさわしいという考えに基づいて両者の比率から支払い能力を判断します。 当座比率は流動資産ではなく当座資産と流動負債の比率を見るものです。当座資産とは流動資産の中から棚卸資産を除いたものです。棚卸資産は流動資産の中でも比較的現金化するのに時間がかかるので、棚卸資産を除き短期間で現金化できるものにしぼった資産を当座資産といいます。流動比率よりもより厳密に短期の支払い能力を見ることができます。流動比率と当座比率については以下で詳しく解説してます。 流動比率当座比率 |
営業キャッシュフロー対流動負債比率や対長期負債比率では、流動負債や長期負債を支払うための原資となるものが営業キャッシュフローであることから、両者の比較から企業の安全性を見るものです。流動負債や長期負債にはどのようなものがあるのかを一覧にして掲載します。
営業キャッシュフロー対流動負債比率と対長期負債比率を求める式は次の通りです。
|
それでは実際に営業キャッシュフロー対流動負債比率と営業キャッシュフロー対長期負債比率をつかって企業分析を行ってみましょう。自動車業界を例に見ていくことにします。 ・自動車メーカー各社の2014年度の財務データ(単位:百万円)
各比率は数値が大きいほど営業キャッシュフローでまかなえている金額が大きいことになるので返済能力が高く安全性が高いと判断できます。各社の数値を見てみるとトヨタの数値が一番高く、営業キャッシュフロー対流動負債比率は22.4%で、営業キャッシュフロー対長期負債比率は26.9%になります。3社の中では日産が最も低いので財務内容に課題があるといえます。 |
流動比率や当座比率に使う流動資産や当座資産、流動負債はいずれも貸借対照表上の項目で、ある時点での数値を表します。比率で使う項目がどちらも貸借対照表上の項目である場合はそれは静態比率といいます。 いっぽう営業キャッシュフロー対流動負債比率では流動負債は貸借対照表上の項目ですが、営業キャッシュフローはある時点ではなくある一定期間の企業の実績を表した数値で、キャッシュフロー計算書上の項目です。ある一定期間の実態を表す項目からなるのは損益計算書上の項目も同様です。比率分析でどちらか一方、もしくは両方がキャッシュフロー計算書や損益計算書上の項目を使う場合はその比率を動態比率といいます。 |