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勘定科目法で固変分解



損益分岐点が使いづらい理由


今回は損益分岐点の際に触れた固変分解についてもう少し詳しく見ていくことにします。損益分岐点を求める際に最も苦労するのが総費用を固定費と変動費に分ける作業である固変分解です。何が難しいのかというと、例えば実際に損益計算書や製造原価明細書の費用の科目を見てみると、変動費とも固定費ともいえない費用がたくさん見受けられます。例を出すと販管費に含まれる給与手当、宣伝広告費、交際費などは純粋な変動費とも純粋な固定費ともいえません。製造原価明細書に含まれる労務費や電力費などもそうです。

こうしたどちらともいえない費用はすべての費用の中でかなりの部分を占めます。損益分岐点を求めるためには一定の方法でこれら費用を変動費と固定費とに分類しなければなりません。しかしながらこれがなかなか難しいのです。損益分岐点が理論的にもスマートで、広く知られているにもかかわらず、あまり活用されていないのはこうした部分にも理由が有ります。

損益分岐点のところでの説明では固変分解の方法として勘定科目法(個別法、個別費用法)と総費用法、総費用法の変形を取り上げましたが、今回は勘定科目法についてさらに詳しく見ていくことにします。



勘定科目法とは


勘定科目法とは損益計算書や製造原価明細書に記載されている科目を一つずつ変動費と固定費に振り分ける方法ですが、変動費と固定費の両方の性質を持っている費用も多く、それらをどちらかに分解するのはなかなか難しいものです。外部分析では正確な固変分解はそれほど期待できないので、どうしても便宜的(一時しのぎのためにとりあえず処置するさま)な分解にとどまっている場合が多いようです。

実際一つ一つの費用を変動費と固定費のどちらに振り分けるか検証するを作業は手間も時間もかかります。そこで中小企業庁の「中小企業の原価指標」に記載されている固変分解の基準を利用するという方法が有ります。こちらでは製造業、卸・小売業、建設業の3つの区分について固変分解の基準が記載されています。これらを利用すれば比較的簡単に固変分解を行えますが、個々の企業では必ずしもこの基準どおりに当てはまるとは限りません。それぞれの企業においてはむしろ事情が異なることのほうが多いでしょう。時間と手間をかけて変動費と固定費の振り分けを検証していくほど精度は上がります。中小企業庁方式の固変分解の基準も完璧ではないのです。

そもそも外部分析の固変分解の精度には限界があります。中小企業庁方式の固変分解は精度は落ちるとはいえ、比較的簡単に固変分解が行えるので、そういうものとして割り切って使うというのも選択肢の一つでしょう。以下に中小企業庁方式の固変分解基準について記載します。

製造業
固定費直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、 通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、 その他販売費、役員給料手当、事務員(管理部門)・販売員給料手当、支払 利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費
変動費直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高―期末製品棚卸高、酒税。

卸・小売業
固定費販売員給料手当、車両燃料費(卸売業の場合50%)、車両修理費(卸売業の場合50%)販売員旅費、交通費、通信費、広告宣伝費、その他販売費、役員(店主)給料手当、事務員(管理部門)給料手当、福利厚生費、 減価償却費、交際・接待費、土地建物賃借料、保険料(卸売業の場合50%)、修繕費、光熱水道料、支払利息、割引料、租税公課、従業員教育費、その他管理費。
変動費売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料、車両燃料費(卸売業の場合のみ50%)、保険料(卸売業の場合のみ50%)、
注:小売業の車両燃料費、車両修理費、保険料は全て固定費。

建設業
固定費労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、現場従業員給料手当、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、その他経費、役員給料手当、 退職金、修繕維持費、広告宣伝費、支払利息、割引料、減価償却費、通信交通費、動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)、従業員教育費、その他管理費。
変動費材料費、労務費、外注費、仮設経費、動力・用水・光熱費(完成工事原価のみ)運搬費、機械等経費、設計費、兼業原価。



日銀方式の固変分解


日本銀行では1996年まで発行していた「主要企業経営分析」において変動費と固定費、売上高の求め方を次のように定めていました。中小企業庁のように細かな勘定科目ごとの分類はなく、また産業ごとの違いも掲載されていないため、かなり簡便な固変分解の方法だといえます。より細かく正確に分類したい場合は中小企業庁の方を使うとよいでしょう。

売上高 総売上高 − 売上値引・戻り高
固定費 労務費 + 経費 − 外注加工費 + 販売費及び一般管理費 + 営業外費用 − 営業外収益
変動費総支出(売上原価 + 販売費及び一般管理費 + 営業外費用 − 営業外収益) − 固定費




※参考資料


損益分岐点  || 限界利益
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最終更新日 2016/09/01
公開日 2014/10/31




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