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損益分岐点とは



損益分岐点とは


費用は売上高との関連で二つに分類できます。1つは売上高と比例的な関係にある変動費で、もう1つは売上高に関係なく発生する固定費です。そして変動費と固定費の合計である総費用と売上高が一致する点が損益分岐点(BEP・Break Even Point)です。費用は変動費や固定費と単純に分類できるものばかりではなく、両方の中間の性格を持つものもありますが、損益分岐点を求める場合は大雑把に変動費と固定費に分類して計算します。

損益分岐点分析はCost(費用)、Volume(売上高)、Profit(利益)の頭文字をとってCVP分析とも呼ばれます。



固定費と変動費


固定費とは売上との連動性がなく、売上が増えようが減ろうが必ず必要となる一定の費用です。設備の減価償却費や事務所の賃貸費用、管理組織の人件費などが該当し、極端な話売上がまったくなくてもかかる費用です。 変動費とは逆に売上に連動して増減する費用で原材料や仕入費用、包装費や運送・配達費などがこれに当たります。売上が増えれば変動費も増加し売上が減れば変動費も減少します。 固定費と変動費は損益計算書を見ても分類して掲載されてはいません。科目ごとに拾っていって自分で合計して計算しなければなりません。以下に一例をあげます。
固定費 ・・・ 営業部・総務部・経理部の人件費、賃借料、保険料、交通費、福利厚生費、研究開発費、設備の減価償却費など
変動費 ・・・ 商品、原材料費、包装材料費、荷造運賃、外注加工費、燃料費など



固定費と変動費の分類


外部分析において総費用を変動費と固定費に分類することは容易ではありません。このことが損益分岐点を経営分析で活用する上での最大のネックとなっているのですが、ここでは代表的な3つの方法を紹介します。

・個別法
損益計算書の各科目を売上高との連動性から判断して分類する。例えば総費用は大きく製造原価、販売管理費、営業外損益に分類できるが、製造原価のなかで原材料費は変動費に、営業外損益は売上高との連動性が薄いので固定費に、販売管理費のうち販売手数料や販売のための旅費交通費は変動費に、一般管理費は固定費に分類すると言うようなやり方です。個別法は勘定科目法ともよばれます。詳しくは勘定科目法で固変分解で解説しています。

・総費用法
総費用と売上高から変動費と固定費を探る方法。やり方はまず縦軸が総費用、横軸が売上高となる表を用意します。次に月ごとに売上高と総費用の値を点で表示します。各点を線でつなぎ下のグラフのようになればグラフから固定費、変動費の額がわかります。


・総費用法の変形
総費用法よりももっと簡単におおよその額ですが変動費と固定費を求めることができる方法です。使うのは前期と今期の売上高と総費用のみでグラフを作る必要もありません。固定費の内容は基本的にほとんど変わらないという前提で計算します。固定費は変わらないので売上高の増加で新たにかかった費用はすべて変動費となります。したがって売上高の増加分と総費用の増加分(イコール変動費)から変動費率がもとめられます。総費用と変動費率がわかれば固定費もわかります。
前期当期増減
売上高800900100
総費用75080050
変動費率は50割る100で50%です。当期の変動費は売上高900の内の50%で450になります。総費用800から450を引けば固定費350を求めることが出来ます。



損益分岐点の計算式


損益分岐点の売上高は売上高と固定費、変動費の額がわかれば求めることが出来ます。損益分岐点の計算式は次のようになります。
損益分岐点 = 固定費
1 - 変動費率
変動費率 = 変動費
売上高
この計算式は次の計算式から導き出されたものです。損益分岐点は売上高と総費用の金額が一致する点ですので両者の差は0です。この式を変形させていけば損益分岐点の売上高を求める計算式となります。

損益分岐点=売上高−総費用=0
=売上高−(固定費+変動費)=0
  売上高=固定費+変動費
  売上高−変動費=固定費
  売上高×(1−変動費÷売上高)=固定費
  売上高=固定費÷(1−変動費÷売上高)



損益分岐点の使い方


損益分岐点とは売上と費用の額が一致する点で、いい変えれば収支トントンになる売上高です。これ以上売りあげれば利益が発生し、これ以下なら損失が発生します。損益分岐点は企業の売上目標を算定する上でも基本となる指標なのです。以下で固定費、変動費、売上高の異なる2つの商店を見ていき、実際に損益分岐点を使って分析していくことにします。

■A商店のデータ
固定費 400万
変動費 170円(仕入値)
売上高 230円(売価)
変動費率 170÷230=0.74%
損益分岐点 400万÷(1−0.74)=1538万
実際の売上高 2000万
実際の利益 120万
■B商店のデータ
固定費 600万
変動費 180円(仕入値)
売上高 220円(売価)
変動費率 180÷220=0.82%
損益分岐点 600万÷(1−0.82)=3333万
実際の売上高 6000万
実際の利益 480万

両社の損益分岐点売上高を比べるとA商店の方が低い金額になります。損益分岐点は小さければ小さいほど黒字化する売上高が少なくて済むので一見A商店の方が有利に見えますが、実際の売上高をみるとB商店の方が高い金額です。その結果B商店の方が高い利益をあげています。損益分岐点が低いからと言って高い売上高を上げることができるともかぎりません。損益分岐点だけでなく実際の売上高もあわせて分析することも重要なのです。



業種による固定費と変動費の割合の傾向


固定費と変動費の割合は業種によっても異なります。例えば製造業であれば生産設備や労働者をたくさん抱えているので固定費である設備の減価償却費や人件費の割合が多くなり、結果固定費の割合が高くなる傾向にあります。運輸や飲食などのサービス業も店舗や従業員などをたくさん抱えているのでその分固定費である人件費の割合が高くなりがちです。

一方卸売業などは仲介手数料が主な収入源であり、利益率はそれほど大きくはありません。そのためたくさんの売り上げを上げることで利益を確保しようとします。その結果変動費である仕入れ原価や配達費などの割合が高くなるため、変動費の割合が高くなる傾向にあります。




実際に損益分岐点を計算してみる


それでは実際の企業で損益分岐点を計算してみることにします。この場合企業の売上原価の内訳が記載されている製造原価報告書などが便利ですが、製造原価報告書の記載義務は連結決算にはなく、単独決算にしかありません。そのため単独決算の数値を用いて計算することにします。平成26年度から「連結財務諸表上セグメント情報を注記している場合」では単独財務諸表でも製造原価報告書の添付を省略することができるとされたため、多くの企業では単独決算でも製造原価報告書が添付されていないケースが増えてきました。そんな中大手トイレタリー企業である花王では単独決算で製造原価報告書が掲載されていたのでこちらで損益分岐点を計算してみます。まずは主な数値です

売上高 768,565百万円
売上原価 341,696百万円
販売費及び一般管理費 333,652百万円
営業外損益 18,433百万円
経常利益 111,650百万円

売上原価のうちの原材料費274,653百万円は変動費に、販売費及び一般管理費のうち販売手数料124,855百万円、荷造及び発送費18,922百万円、広告宣伝費52,573百万円、販売促進費20,480百万円は変動費として計算し、変動費の合計額は491,483百万円とします。これを売上原価と販売費及び一般管理費、営業外損益を合計した総費用656,915百万円から引くと固定費の165,432百万円がはじき出されます。

売上高  768,565
総費用  656,915
変動費  491,483
固定費  165,432

売上高と変動費、固定費の金額がわかったのでここから上記の損益分岐点を求める式を用いて計算するとその額は458,260百万円となりました。この金額よりも売上が上回れば利益が発生し、下回ると損失が発生することになります。今回の花王の損益分岐点の計算については損益分岐点で分析でも詳しく解説しています。




※参考資料
経営分析入門―ビジネス・ゼミナール
経営分析の基本
これならできる!経営分析
ほんとうにわかる経営分析
新版経営分析の基本がハッキリわかる本


※実践編


自己資本当期利益率(ROE)  || 勘定科目法で固変分解
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最終更新日 2016/11/03
公開日 2008/03/21




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