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付加価値を計算してみる




付加価値を計算するには

前回の労働生産性で分析でも付加価値は出てきたのですが、付加価値の計算について詳しくは掲載しませんでした。付加価値は企業の生み出した価値を見る指標ですが、財務諸表に付加価値としてその金額が掲載されているわけではないため、自分で必要な勘定科目を合計して金額を求める必要が有ります。また勘定科目によっては財務諸表に掲載されていないものもあるため、すんなりと金額をはじきだせないのも使いづらい理由のひとつです。このように難点もある付加価値ですが、今回は付加価値を計算することに焦点を当てて、いちから計算して見ることにします。

■今回使う指標
付加価値

付加価値とは企業が新たに生み出した価値のことで、例えばメーカーなら原材料などを外部から調達してそれを加工して商品を製造し、それを販売して売上を達成します。売上から外部から調達した資本である原材料費を差し引いたものが企業が新たに生み出した価値である付加価値になります。付加価値を求める計算式には控除法と加算法の2種類が有り、計算が容易なことから加算法がよく使われます。今回は実際に加算法を用いて2つの企業で付加価値を計算してみることにします。対象とする企業は花王とライオンにします。

まず加算法の計算式です。

付加価値 = 営業利益+人件費+賃借料+租税公課+支払特許料+減価償却費



有価証券報告書を見る

まずは花王とライオンの有価証券報告書を見ていくことにします。営業利益については連結損益計算書から簡単に確認することが出来ます。連結損益計算書では販売費及び一般管理費の内訳が細かく記載されてないことが多いです。この場合連結損益計算書「注意事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」の(連結損益計算書関係)のところで、「販売費及び一般管理費のうち主要な費用項目及び金額」としてその内訳が記載されています。花王は販管費の内訳は別記で、ライオンはそのまま損益計算書上で掲載しています。

付加価値を求めるための人件費についてですが、人件費のうち製品の製造に関わる従業員らの給与などは売上総利益を求めるための製造原価の項目で記載され、販売や管理業務に関わる従業員の給与は営業利益を求めるための販売費及び一般管理費の項目で記載されます。ここで一つ問題が出てきます。販管費の場合はまだ内訳が記載されていますが、製造原価については内訳が掲載されていないのです。従来は貸借対照表、損益計算書の添付書類として製造原価報告書も掲載されていたのですが、連結財務諸表では添付の義務がないため、ほとんど掲載されることがないのです。人件費や賃借料、租税公課や支払特許料、減価償却費は製造原価にも含まれています。

主たる業務が販売である小売や商社などと違い、製造業では製品の製造に関わる製造原価の比率も高くなります。当然それにかかる人件費等の金額もその分大きくなります。しかしながら連結財務諸表では製造原価報告書がないため、製造原価の内訳がわかりません。これでは製造原価のうち人件費等がどのくらいの金額なのかが外部からはわからないのです。製造原価、販管費をあわせた人件費や賃借料、減価償却費等の総額がわからないとなると、外部分析では非常に不便です。なぜ連結財務諸表では製造原価報告書が掲載されないのかはよくわかりませんが、今後改善されることを期待したいところです。

連結財務諸表では製造原価報告書の記載義務がないと話しましたが、単独財務諸表では添付資料として記載しなければなりません。このため単独決算では製造原価の内訳を把握することが可能です。しかしながら平成26年3月期からは「連結財務諸表上セグメント情報を注記している場合」などの条件を満たすと単独財務諸表でも製造原価報告書の記載を省略することが可能となりました。グループ全体の製造原価がわからなくても、せめて単体での製造原価だけでも把握できればという状況すら厳しくなってきているのです。こうなると単体でも製造原価の内訳もわからなくなってしまいます。

話を付加価値に戻しますが、製造原価の内訳がわからない以上、付加価値を求めるための人件費や賃借料、租税公課や減価償却費は販管費の部分しか把握できないため、売上に占める製造原価の内訳が多い製造業ほど正確な付加価値とは離れた金額になってしまいます。昨今の制度の改正により付加価値という指標がいよいよ使いづらいものとなってしまいました。



製造原価報告書がないとどうなるか

実際に付加価値を計算する上で製造原価報告書がどの程度重要かを平成25年度の花王の有価証券報告書を例に見ていくことにします。平成25年度の花王の有価証券報告書の単独財務諸表ではまだ製造原価報告書が添付されています。これが平成26年度版になると省略されてしまっているのですが、まずは人件費と減価償却費について見ていきましょう。製造原価の労務費と減価償却費はそれぞれ19,037百万円と15,811百万円、販管費の人件費と減価償却費はそれぞれ25,304百万円と25,194百万円です。営業利益は93,217百万円です。賃借料と租税公課と支払特許料については内訳で記載がなかったので省略します。本来内訳では主要な項目が記載されているもので、それほど主要でない、金額的に大きくないものは省略される傾向に有ります。そのため記載がないので金額的にも大きくはないと判断して今回は計算では省略することにします。これらを合計して付加価値を計算すると178,563百万円になります。

もし仮に製造原価の内訳がわからず、その分は考慮せずに付加価値を求めるとすると金額は137,558百万円となり、23%も減少することになります。ただし減価償却費に関しては連結財務諸表ではキャッシュフロー計算書のところで総額を確認することが出来ます。減価償却費は総額がわかるということを考慮するとこの場合の付加価値の計算では製造原価の労務費だけがわからないということになるので、結果金額は159,526百万円となり、約11%の減少にまで差が縮まります。

ライオンでも同様に計算して見たところ製造原価の内訳を考慮した場合は付加価値は28,671百万円で、製造原価のうちの労務費をそこから除くと23,931百万円となり、その差は17%となります。付加価値の計算で製造原価報告書がないことで特に問題となるのは製造原価に含まれる労務費であるということがわかります。

ではこの労務費について製造原価全体に占める比率は何パーセントぐらいなのでしょうか。調べたところライオンも花王も7%程でした。ということは製造原価報告書なしに付加価値を計算する場合は、売上原価の7%ほどを労務費と想定して付加価値に加算するというのも一つの方法です。ただしこの7%とという数字はあくまでライオンと花王の場合で、その他の企業では実際に製造原価報告書の記載のある年度の有価証券報告書を確認し、人件費が何%ぐらいかを確認する必要が有ります。その上で調べたパーセンテージを使って売上原価から大体の労務費を計算して見るのもいいでしょう。しかしながらこれはあくまで過去の数値から計算した仮定のものです。実際の数値との差が大きい場合も考えられます。またあくまで単独での比率なので連結ではまた異なる数値になる事も考えられます。これも十分な決め手にはかけるやり方だといえます。

せめて減価償却費のように何らかの形で人件費の総額でもわかれば付加価値の計算もかなりやりやすく実数に近いものになるはずです。そのため制度の改正が期待されるところです。現状では付加価値の計算では製造原価に占める労務費は考慮しないか、過去の数値から仮定の数値をはじき出してそれを加えて付加価値とするかといったやり方などが考えられます。




※参考資料


労働生産性で分析 || 営業キャッシュフローで企業分析
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text 2015/03/31




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