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利益は意見、キャッシュは事実



利益とキャッシュの違い


現在の会計制度では継続して行う企業の事業を1年という会計期間で区切り、その間の業績を利害関係者に報告しなくてはなりません。事業というのは継続したプロセス(過程・進行)であり、それを1年で区切った場合、収益獲得活動がまだ途中段階にあるものも当然出てきます。進行中のプロセスをどのように区切れば、最も真実に近い形で測定することができるのかというのは大きな課題です。会計学ではこうした課題に答えるために様々な計算ルールが定められています。こうした会計ルールに基づいて出した業績が利益になります。

一方キャッシュフローは単純にキャッシュの入りと出の流れであり、結果としてどれだけキャッシュが増減したかで業績を判断します。

例えば減価償却費などわかりやすい例です。企業は製品を作るために大規模な設備を購入したとします。生産設備は数年にわたり製品を作るのに使用されます。キャッシュフローではキャッシュを支払った際に一括で費用をその期にそのまま計上します。一方会計ルールに基づく業績では生産設備が数年にわたって使われる場合、支払った金額も数年にわたって分散して費用計上すべきであると考えます。そうして毎期に分散された費用を減価償却費といいます。費用が異なれば当然利益も変わってきます。このことから単純にキャッシュの出入りを計算するキャッシュフローと、会計ルールによって計算される利益は金額が異なるわけです。もちろんこれ以外にも様々な会計ルールが存在します。

主な会計方針
・有価証券の評価基準及び評価方法
・棚卸資産の評価基準及び評価方法
・固定資産の減価償却の方法
・繰延資産の処理方法
・引当金の計上基準
・収益及び費用の計上基準



意見としての利益


利益は会計ルールに基づいて計算されます。会計ルールでは固定資産の減価償却の方法や、資産の評価基準、評価方法など様々なルールが定められてます。またそれぞれのルールで複数の選択肢が認められています。どの選択肢を選ぶかにより利益の額は変化します。経営者はどの選択肢を選ぶかにより、自分の意見を利益に反映することが出来ます。

例えば減価償却費の計算では定額法と定率法の二つが有ります。定額法では毎期決まった金額を費用計上していきます。一方定率法では例えば50%などパーセンテージにより計算し、初期ほど金額が多く、期を重ねるごとに計上額が減っていきます。定額法を選べば初期は定率法よりも費用の金額が小さくなるので利益が大きく見積もられ、期を重ねるうちにその差は小さくなります。そしてある時期を境に今度は定率法の金額が漸減して減っていくのに対し、定額法は同額で変わらないので、定率法を選んだ場合よりも定額法の方が費用が多くなり結果利益も小さくなります。このように会計ルールの選択肢により計上される利益が変化するのです。



会計ルールに基づく利益ではいくつかの課題も抱えています。 経営者は事業内容について最もよく知りえる立場にあり、その情報に基づき業績を適切に測定する会計ルールを選ぶことが出来る立場にいます。一方で経営者はどれだけ業績を上げたかにより評価されるので、業績をよりよく見せる会計ルールはないかと考えるかもしれません。会計ルールの選択では最適な業績の測定よりも業績の見栄えをよくすることを重視する可能性もあるのです。

また資産については価値が減少すればその分損失として計上しなければいけませんが、実際いつ、どれだけ価値が減少したのかを正確に判断するのもなかなか難しいものです。 例えば融資先企業が倒産はしていないものの業績が悪化しているケースでは、資産である売掛金をどの程度回収できるのか、回収できない損失分をどの程度計上すべきかは経営者の判断にかかる分が大きくなるものです。必ず回収すると強気な経営者や損を出したくないと思う経営者は、実際に発生している損失分を認識しない可能性も有ります。

このように経営者の意見を反映する利益では経営者の外部への評価を気にした判断や資産価値の減少の正確な把握の困難さ、損失の見積もりの甘さなどの影響が出る可能性があるのです。



事実としてのキャッシュ


利益は会計ルールに基づいて計算されます。どの会計ルールを選ぶかによって同じ経済事象でも利益の額は変化します。会計ルールを選ぶことができるのは経営者です。このことから利益は経営者の意見を反映するものだといわれています。一方でキャッシュフローでは会社の資金の流出入という事実のみが記載されているので、会社を資金面から把握するという意味では相対的に客観的であるといえます。また計算に当たって会計方針の影響や資産の評価などの影響も受けません。このことから「キャッシュは事実」であるなどと表現されることが有ります。

利益では経営者が会計ルールの選択や資産の評価などを悪用するリスクを抱えていますが、キャッシュではそうした恣意性は排除することができ、外部からその事業の成績を見るものに対してより客観的な情報を提供することが出来ます。




まとめ


会計ルールとは継続する事業をある一定期間で区切り、その間には途中段階にある事業も含まれているなかで、その業績をより正確に測定するために考えられたもので、それに基づく業績の結果が利益になります。会計ルールには選択肢の幅があるのでどうしてもそれを選ぶ経営者による恣意性が介入してしまいます。

いっぽうキャッシュはただ資金の入りと出を測定するだけなので恣意性が介入する余地はほとんどありません。その意味では客観的な事実であるといえますが、資金の入りと出だけではわからない1会計期間の業績の正確な把握を目的にしたものでは有りません。利益にもキャッシュにもどちらにも一長一短があるといえます。




※参考資料
誰でもわかるキャッシュフロー会計のしくみ
キャッシュフロー経営入門
キャッシュフロー経営の基本
決算書 読解力の基本が身につく88の極意


現金主義、発生主義、実現主義の違い || キャッシュフロー計算書の意味と見方
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text 2015/03/11




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