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固定比率と固定長期適合率



固定比率とは


固定比率の意味

企業は事業を営む上で様々な設備投資を行います。投資は事業に先行して行われるのが常です。したがって判断を誤れば投資の行きすぎにもつながります。過剰投資は十分な収益をもたらしませんので収益の悪化、資金繰りへの影響などをもたらします。 固定比率はそうした投資の行きすぎを判断する指標のひとつです。

固定比率の計算式

固定比率の計算は固定資産を自己資本で割って求めます。この式は投下資本が長期に渡って固定される固定資産は、返済の必要のない自己資本の範囲内に収めるべきであるという考えにもとづくものです。

固定比率の計算式

貸借対照表
貸借対照表



固定資産とは何か


固定資産は1年を超えて保有する資産

現金や預金、売掛金や棚卸資産などのように1年以内に現金化される資産を流動資産といいます。これに対し現金化までに1年を超え、長期に保有することになる資産を固定資産といいます。固定資産は土地や建物、機械装置など形のある資産である有形固定資産と、営業権や特許権など形のない資産である無形固定資産、長期貸付金や投資有価証券からなる投資等その他の固定資産に分かれます。

固定資産
有形固定資産
 建物及び構築物
 機械装置及び運搬具
 工具、器具及び備品
 土地
 リース資産
 建設仮勘定
 有形固定資産合計
無形固定資産
 のれん
 商標権
 その他
 無形固定資産合計
投資その他の資産
 投資有価証券
 長期貸付金
 長期前払費用
 繰延税金資産
 その他
 貸倒引当金
 投資その他の資産合計
固定資産合計

80,700
80,600
12,100
65,400
8,700
9,700
257,200

206,200
108,100
34,000
348,300

12,300
1,800
13,000
63,200
19,600
-200
109,700
715,200

固定資産の中身を分析

固定資産に投資有価証券などの換金性の高い資産が含まれている企業では、固定比率の実際の数値より安全性は高くなります。それから、備品や機械などの減価償却資産が多い企業では、年を重ねるごとに減価償却で固定資産が減少して行き固定比率も改善されていきます。



なぜ固定比率に自己資本が使われるのか


上でも少し触れましたが長期に拘束される固定資産をなぜ安定した自己資本の範囲で納めるべきなのかをもう少し掘り下げます。固定資産は投下した資金が回収されるまで長い期間を必要とします。例えば土地に投資すれば売却されるまで資金は回収されません。また建物や機械装置などへの投資では、まず耐用年数が設定され、その期間で分割して減価償却費として回収されます。耐用年数が長く設定されていれば回収までの期間も長期化することになります。

こうした固定資産を短期返済による資金で賄おうとすると、投下した資金はなかなか回収できないのに、返済ばかりがかさむため、投下資本の回収までに必要となる資金(運転資金)の額も大きくなり、資金繰りが厳しくなってきます。ですからこうした回収が長期化する固定資産の投資では、返済する義務のない資金調達手段である自己資本の範囲内に収めるのが企業経営の面では最も安定しているといえるのです。



固定比率の見方


固定比率は100%以内が理想

固定比率は100%以内であればほぼ問題はありません。100%以内というのは固定資産が自己資本の範囲内にあることを意味します。しかしながら日本では銀行からの借入金などにより設備投資を行う企業が多いので範囲内に収めるには厳しいのが実情です。またガスや電力など多額の設備資産を有する企業では、自己資本の範囲内で収めるには無理があります。そこで固定比率よりも少し緩めの指標である固定長期適合率が使われます。

各業界の固定比率

それでは実際に財務省が発行する法人企業統計をもとに、2015年度の各業界の固定比率を見て行くことにします。自動車や化学、建設業などは固定比率が100%を切っており、かなり優秀な数値であるといえます。製造業と非製造業では製造業の固定比率が108で非製造業は151なので、製造業の方が固定比率の数値はいいです。

固定比率が高い業種

一方で農業や不動産業、陸運業は固定比率が200%近辺と安全性に課題を抱える数値であるといえます。さらに宿泊業、飲食業、電気業に至っては固定比率が400〜500と非常に高い数値です。こうした業種は多くの建物や設備などを抱えているため固定資産の金額が非常に膨らみ、自己資本だけでは十分に補うことができないのが実情です。こうした業種は自己資本だけでなく固定負債も含めた指標である固定長期適合率で安全性を見てみるといいでしょう。

業界別固定比率の目安(2015年)



固定長期適合率とは


固定長期適合率は、固定資産が自己資本と固定負債の合計額の範囲内であるかどうかを見る指標です。固定負債も借入金には変わりないのですが、返済までに時間の猶予があることから、資金繰りにもあまり影響しないだろうとの考えで用いられます。ちなみに流動負債は返済期限が1年以内の負債で、固定負債は返済期限が1年を超すものを指します。

固定長期適合率の計算式



固定長期適合率の見方


固定長期適合率は100%以内で

まず固定比率が100%以内かどうかを見て、超過した場合固定長期適合率を見ます。固定長期適合率も100%超えてくると問題です。 長期に渡って固定される固定資産が、自己資本と固定負債でまかなえないとなると、足りない部分は短期借入金の転がしで補うことになります。これは自転車操業に近い状態ですので注意が必要です。

各業界の固定長期適合率

それでは実際に各業界の固定長期適合率を見てみることにします。固定長期適合率でみると多くの業界が100%以内と良好な数値を示しています。製造業は76で非製造業は83なのでどちらも固定長期適合率は100を切る数値です。自動車や電気機械産業、化学や建設業は固定比率でもいい数字を示していましたが、固定長期適合率でも良好な数値となっています。

固定比率が悪い業種の固定長期適合率は?

固定比率では宿泊業や飲食業、電気業などは400〜500とかなり高い数値で問題を抱えていましたが、固定長期適合率になるとそれぞれ100近辺で大きく数値は改善しています。大量の固定資産も自己資本だけでなく固定負債も含めた額でみると、その範囲内、もしくは若干のオーバーで済む程度には収まっているようです。

業界別固定長期適合率の目安(2015年)



近年の固定比率、固定長期適合率の推移


ここ数年の全産業の固定比率、固定長期適合率の推移を見たいなら財務省が発表している法人企業統計調査が便利です。直接固定比率や固定長期適合率の数値は掲載されていませんが、全産業の固定資産や固定負債、自己資本の金額は掲載されているので、そこから計算して固定比率、固定長期適合率の数値を求めることができます。

全産業の固定比率、固定長期適合率どちらも近年は改善傾向にあるようです。固定長期適合率は2012年の時点でも100%を切っているので、安全圏であるとは言えますが、固定比率は144%とかなり高い数値です。この固定比率も2015年には129%にまで下がってきています。

全産業の固定比率、固定長期適合率の推移(億円)
2012201320142015
固定資産7,380,5467,602,7587,836,1418,130,607
固定負債3,858,5113,866,9673,890,6273,978,555
自己資本5,092,6465,392,1505,859,7506,264,284
固定比率144%140%133%129%
固定長期適合率82%82%80%79%



減価償却の進展と固定比率の関係


会社の設備は減価償却により耐用年数の期間で分割して費用計上され、徐々に投下資本が回収されていきます。減価償却が進展するとその分設備の金額は減少していきます。その結果固定比率は改善していきます。減価償却の進展具合は貸借対照表上の設備の価格と、減価償却累計額との比較でわかります。設備の金額に対して減価償却累計額の金額が大きくなれば、その分減価償却は進展し、設備の耐用年数も経過していると判断することができます。設備の耐用年数が経過すれば当然設備は陳腐化し、生産効率にも影響し、また修繕費なども増加していきます。耐用年数が経過していけば新たな設備投資の時期も近づいてきます。そうなるとその時期に固定比率が悪くなる可能性もでてきます。

減価償却累計額と設備の現在価格

減価償却が進展すれば設備の簿価が減少し固定資産は減るので固定比率は改善します。一方で設備の陳腐化により生産性への影響もでてきます。また新たな設備投資の時期も近づき、その期には固定資産が増えることから固定比率は悪化します。

減価償却の進展の固定比率への影響




※参考資料
経営分析の基本
経営分析の考え方・すすめ方
これならできる!経営分析
ビジネスゼミナール経営分析入門
決算書読解力の基本が身につく88の極意
財務省・法人企業統計調査


※実践編


当座比率の意味や計算式、目安について解説 || 自己資本比率(株主資本比率)とは
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最終更新日 2017/06/02
公開日 2006/03/01




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