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流動比率の意味や計算式について、200を超えれば理想的



はじめに


流動比率とは企業の安全性を分析する指標のひとつで、短期債務支払能力を判断します。流動負債は短期間で支払期限が来る負債なので、その返済手段には短期間のうちに支払手段となる流動資産が相応しいという考えに基づいています。

流動比率 = 流動資産 × 100
流動負債
流動資産 = 1年以内に支払手段となる資産
流動負債 = 1年以内に支払期限の来る負債

・貸借対照表



2対1の原則


これはアメリカの銀行が経験により導き出したものです。そもそも流動比率というのは銀行業界が融資企業の信用を調査するひとつの指標として頻繁に使用していたものです。そのため流動比率を銀行家比率などともいいます。

そもそもなぜ200%なのかというと、流動負債は支払が確定しているのに対し、流動資産は債権の貸し倒れや、棚卸資産の減耗などで価値が減少する可能性があるため、流動資産は流動負債の150〜200%が望ましいとされています。しかしながら実際には100〜120%の企業も多く存在しています。

また製造業では原材料や仕掛品、製品などの棚卸資産が多いので流動比率は比較的良好ですが、非製造業になると棚卸資産が少ないぶん、流動比率は悪くなります。このように業種によって資産構成の特徴が異なりますので、異業種による比較はあまり意味がなく、同業種での平均やその企業の過去の実績との比較が有効だといえるでしょう。





全産業の流動比率の推移は?


全産業や製造業、非製造業の近年の流動比率の推移は財務省発表の法人企業統計調査で調べることができます。流動比率の数値は全産業で近年は減少傾向にありましたが、ここ数年は回復基調にあります。特に製造業、非製造業それぞれが改善してきていますが、製造業の方が数値が14%ほど高くなっています。製造業の146.7%という数値は流動比率としてはまずまずの数値です。

製造業でも繊維業界や化学業界、金属製品業界などは2014年度で流動比率が170%以上と特に高い数値を示しています。一方で農林水産業や電気業、陸運業や飲食サービス業、宿泊業は80%近辺とかなり低い数値となっています。

産業別流動比率の推移
2011201220132014
全産業129.1130.9132.9136.7
製造業137.8139.7143.7146.7
非製造業125.2127.3128.6132.7




流動資産の中身の分析


流動比率が高いほど短期的な債務支払能力が良好だといえます。 ただし流動資産の内訳で売掛金や棚卸資産の割合が大きい場合には注意が必要です。すぐに現金化できる現金や預金に対して売掛金や棚卸資産では商品販売や債権回収で資金化しなければ返済手段とはなりません。より厳密に短期債務支払能力をみたいのなら流動資産に棚卸資産を含めない当座資産を用いた当座比率を利用します。

売掛金や棚卸資産ではその内訳で不良在庫や不良資産、不良債権が多く含まれている可能性があるのでその内容にも注意が必要です。

流動資産の内訳



棚卸資産って何?


棚卸資産とは決算の時点でまだ販売活動を経て現金化されていない資産のことです。商品、製品、仕掛品(製造が完成してない未完成なもの)、原材料などがそれに当てはまります。ようは在庫のことで売れなければ現金化されません。販売して現金化するというプロセスが必要なため、流動資産に棚卸資産が多い場合はその分安全性は低くなります。

棚卸資産の内訳
出荷可能 製造過程にあるこれから
商品
製品
半製品
仕掛品
未成工事支出金
原材料
貯蔵品



流動負債って何?


流動負債とは1年以内に返済期限が来る負債のことで、主な勘定科目には支払手形、短期借入金、未払金、買掛金、前受金、預り金、納税引当金、未払費用、関係会社からの短期債務、前受収益などがあります。

買掛金とは商品や資材の仕入代金の未払金のことで、有価証券や固定資産など通常の仕入取引に関わらない資産の購入の場合は未払金勘定が使われます。前受金は受注品の手付金や証拠金のことです。



売上債権や棚卸資産の適正度を判断するには


流動比率を使う場合は流動資産の中身についてもチェックすることが大事なのは説明しましたが、では流動資産のうち売掛金や受取手形などの売上債権、棚卸資産の金額が適正かどうかを判断するにはどうすればいいのでしょうか。この場合は売上債権回転率と棚卸資産回転率が便利です。

売上債権回転率とは売上債権がしっかりと回収されていて、売上債権に滞留などが生じていないかを見る指標で、棚卸資産回転率は棚卸資産が効率的に活用されて売り上げにつながっているかを見る指標です。これら二つの指標は売上債権と棚卸資産の金額が妥当なのかを見る際に使われます。流動資産の中身をチェックする場合は、合わせてこうした指標も見て行きたいものです。くわしくは売上債権回転率棚卸資産回転率で解説しています。



流動比率を実例で見てみる


それでは実際に大手化学メーカーである花王を例に流動比率と流動資産の中身について見て行くことにします。花王の2015年度の流動比率は197%で非常に高い数値となっています。短期支払い能力の面では200%に近い数値なのでほぼ問題ないといえるでしょう。

その中身について見てみると、まず流動資産の額が733,233百万円でそのうち受取手形や売掛金は205,603百万円、棚卸資産は158,134百万円となっています。すぐに現金化できる現金・預金、有価証券の合計額でも330,762百万円でその金額だけでも流動負債の377,493百万円をほぼ賄うことができます。

受取手形や売掛金もすでに販売は済ませており、後は現金回収だけなので棚卸資産ほど現金化のハードルは高くはありません。したがって流動資産から棚卸資産だけを控除するとその金額は575,099百万円で、この数値と流動負債の比率である当座比率でも152%と100%を軽く超える数値となっています。当座比率については当座比率で詳しく解説しますが、花王の短期支払い能力からみた安全性はかなり高いことがわかります。

流動資産733,233百万円
現金預金125,159百万円
有価証券112,329百万円
受取手形及び売掛金205,603百万円
棚卸資産158,134百万円
流動負債377,493百万円




100%をきった場合


流動比率が100%をきっている企業がすぐさま負債が返済できなくて倒産するというわけではありません。この場合借入金を借り替えたり、土地や有価証券を売却するなどして資金を確保する手段がまだ残されているからです。



長期借入金へと借り換える


短期借入金を長期借入金へと借り換えることができれば、返済までの期間が伸びるためそれだけ資金繰りも安定し流動比率も改善します。長期よりも短期の方が資金を調達しやすい傾向にありますが、安全性を考えれば長期借入金の比率を高める方が企業にとっては有利です。



運転資本


運転資本とは流動資産と流動負債の差額の金額に当ります。これをもって企業の短期債務支払能力を判断します。流動比率が比率によって短期債務支払能力を判断するのに対し運転資本では実数により判断します。




※参考資料
経営分析の基本
経営分析の考え方・すすめ方
これならできる!経営分析
ビジネス・ゼミナール経営分析入門
決算書読解力の基本が身につく88の極意
財務省・法人企業統計調査


※実践編


安全性とは || 当座比率の意味や計算式、目安について解説
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最終更新日 2016/12/03
公開日 2006/01/03




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