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営業キャッシュフローの見方、計算の仕方、直接法と間接法



はじめに

営業キャッシュフローは企業が本業で稼いだ収益を実際の現金の流出入に基づいて計算したものです。損益計算書の収益はまだ現金を受け取っていない売上債権や、まだ現金を支払っていない仕入債務なども収益、費用として計上していますが、キャッシュフローの計算では実際に現金の流出入があったものを収益、費用として計上して計算します。

今回はこの営業キャッシュフローの重要性や直接法と間接法という営業キャッシュフローの2種類の計算の仕方について解説します。そして営業キャッシュフローの見方や使い方、営業キャッシュフローを増やすにはどうすればいいのかについても取り上げます。最後に営業キャッシュフローの計算式(間接法)の出発点である当期純利益を増やすにはどうすればいいのかについて解説します。






営業キャッシュフローとは

営業キャッシュフローとは企業が商品を販売したり、サービスを提供したりして得た資金収入から、原材料費、人件費などの資金支出を差し引き、営業活動から得られる現金収支を明らかにしたものです。

企業は営業活動を維持し、新規投資を行い、借入金を返済し、配当を支払う必要が有りますが、そのためには資金(キャッシュ)が必要となります。キャッシュの原資は基本的には本業でしっかりと稼ぐが、増資や借り入れなどに頼るかのどちらかです。営業キャッシュフローは本業でどの程度キャッシュを稼いでいるのかを表します。営業キャッシュフローの求め方には直接法と間接法がありますが、一般に間接法が広く採用されています。



営業キャッシュフローの意義

市場は絶えず変化する

企業は継続して事業を行っていくことが前提です。しかしながら市場環境によってはそのままでは事業を継続していけなくなることもよくあることです。ライバルとの競争に勝つためにも積極的に投資を行い、競争力を確保していくことが企業には求められます。また市場自体が大きく変化することも有ります。例えばエネルギー業界は従来は石炭が主力でしたが、それがガス、石油へと移っていく中で、従来のエネルギー源を主力にしている企業ではそのままでは市場の衰退とともに企業規模も縮小していくでしょう。

投資資金確保には営業キャッシュフロー創出が重要

これに対応するには新たなエネルギー分野への投資が必要です。こうした新規投資を行っていく上で重要になるのは十分な資金を確保しているかどうかです。営業キャッシュフローをしっかりと生み出せていれば、こうした変化に向けての投資にしっかりと資金を割り当てることが出来ます。結果企業を長く継続させていくことにもつながるわけです。

営業キャッシュフローが必要な理由



直接法

直接法では営業活動での現金収入(キャッシュイン)と、商品の仕入れ、人件費、その他経費などでの現金支出(キャッシュアウト)の総額を各項目ごとにそれぞれ集計し、現金収入から現金支出を引いて差額を求めます。実際にどのような形式になるのかは下記で直接法によるキャッシュフロー計算書を記載しているのでそちらをご覧ください。

キャッシュフロー計算書 (直接法)
. 営業活動によるキャッシュフロー
営業収入
商品の仕入れによる支出
人件費支出
その他の営業支出

200,000
-100,000
-60,000
-20,000
小計 20,000
利息及び配当金の受取額
利息の支払額
法人税等の支払額
4,000
-5,000
-8,000
営業活動によるキャッシュフロー 11,000

直接法では営業活動に係るキャッシュの流れを営業収入や仕入れ、人件費などの各項目ごとに把握できるというメリットが有りますが、集計する作業が必要で作成に手間がかかります。ちなみに受取配当金や受取利息は投資キャッシュフローに、支払利息は財務キャッシュフローに記載することも認めらていますが、営業キャッシュフローとして記載される事が多いようです。支払配当金は財務キャッシュフローにしか記載できません。

受取利息受取配当金支払利息支払配当金
営業キャッシュフロー×
投資キャッシュフロー××
財務キャッシュフロー××

ちなみに損益計算書も費用と収益の各項目ごとに総額を集計して計算します。直接法はキャッシュベースで見た損益計算書というように考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。

営業キャッシュフローの計算式(直接法)



間接法

損益計算書の税引前利益に調整を加えて表示します。税引前利益からキャッシュベースの利益へと調整される過程が段階的に示されているので、税引前利益とキャッシュフローでどの部分に大きな違いがあるのかなどの原因分析が容易になるというメリットが有ります。

手順はまずは税金等調整前当期純利益からはじめ、現金の流出入を伴わない損益計算書上の項目を加減します。例えば減価償却費は損益計算書上は費用ですが、実際に現金が流出するわけではないので、営業キャッシュフローの計算にあたり差し引いた分を戻しいれます。次に受取配当金や受取利息、支払利息など投資、財務キャッシュフローに該当する項目を加減します。例えば受取利息の場合でいうとこれは投資・財務キャッシュフロー項目なのでこの収入分は差し引きます。そしてその次は貸借対照表上の調整項目を加減して小計を求めます。貸借対照表の調整項目については以下の営業キャッシュフローの見方のところで解説します。

小計まで求めた後は再び受取配当金や受取利息、支払利息を今度は先ほどとは逆の加減をします。これはどういうことかというと受取利息の場合で言うと営業キャッシュフローには本来含まれないのでいったん差し引いた分を再び加えるということです。なぜこのようなことをするのかというと受取配当金や受取利息、支払利息は直説法と同様営業キャッシュフローとして記載してもいいからです。じゃあわざわざいったん加減した後再び逆の加減をする必要はないのではないかと思うかもしれませんが、再び加減する際は未収、前受、前払、未払など実際のキャッシュの動きがないものを除いてから加減します。こうすることで実際にキャッシュの動きがあった受取配当金や受取利息、支払利息だけが営業キャッシュフローとして計算に加わるのです。このことから例えば受取利息でいったん差し引いた金額と再び加えた金額に差が出ることがよく有ります。

調整項目
・現金の流出入を伴わない損益計算書上の項目
(減価償却費、引当金、有価証券評価益・評価損等)

・貸借対照表上の調整項目
(貸借対照表での2期間での売掛金、棚卸資産、買掛金等の増減幅)

・投資活動・財務活動に区分される取引に関して発生した損益は除く
(有価証券売却損益、受取利息、支払利息等)

営業キャッシュフローの計算式(間接法)

キャッシュフロー計算書 (間接法)
. 営業活動によるキャッシュフロー
税金等調整前当期純利益
減価償却費
連結調整勘定償却額
貸倒引当金の増加額
受取利息及び受取配当金
支払利息
有形固定資産売却益
売上債権の増加額
棚卸資産の減少額
仕入債務の減少額

15,000
10,000
60
1,000
-4,000
5,000
-60
-6,000
3,000
-4,000
小計 20,000
利息及び配当金の受取額
利息の支払額
法人税等の支払額
4,000
-5,000
-8,000
営業活動によるキャッシュフロー 11,000



営業キャッシュフローの見方

事業継続、新規投資には営業CFがプラスであることが大事

営業キャッシュフローはプラスであることが基本です。営業キャッシュフローは企業の本業での稼ぐ力を見るものなので、プラスが大きければ大きいほど、収益力のある優秀な会社であると判断することができます。逆にこれがマイナスになると、事業継続のために借金を増やしたり、十分な設備投資ができないなどの影響がでてきます。

営業CFは成長段階によって見方も変わる

基本は営業活動からのキャッシュフローで投資に必要な資金をまかなうことができることこそ理想ですが、企業の成長段階によってはそうはいかない場合も有ります。若い企業でこれから事業を発展させていく段階では設備投資や運転資金の確保に費用がかさむため、出て行くお金のほうが大きい傾向に有ります。このような段階では営業キャッシュフローだけでは資金需要に追いつかないこともざらです。このため企業の成長段階も考慮したうえで営業キャッシュフローを見ていく必要があるといえます。

営業利益との比較で実際のキャッシュの流出入をチェック

営業利益との比較も重要です。営業利益と営業キャッシュフローが連動して増減していれば業績によるものだと判断でき、逆に連動しない場合は取引条件の変化によるものだと判断できます。 例えば売上の現金比率が減少して掛けによる割合が増加すると、 営業利益には変化がなくても、営業キャッシュフローは減少します。また仕入の支払いの現金比率が減少して掛けによる割合が増えると、こちらも営業利益に変化がなくても営業キャッシュフローは増加します。

営業利益との格差を広げる要因は以下の通りです。

キャッシュフローへの影響
勘定科目増減プラスマイナス
売掛金増加
減少
受取手形増加
減少
棚卸資産増加
減少
前払費用増加
減少
買掛金増加
減少
支払手形増加
減少
未払費用増加
減少
未払法人税増加
減少




棚卸資産について

上記で売掛金や買掛金などの債権や債務について営業キャッシュフローの増減要因になることは説明しましたが、棚卸資産がなぜ営業キャッシュフローの増減要因になるのかも説明します。期中に仕入れた商品や製品、仕掛品、半製品、原材料が期中に売れればその仕入額は費用として損益計算書に計上されますが、期末まで売れ残った場合は、棚卸資産勘定に振り替えられ、費用からは差し引かれて資産扱いになります。実際に期中にキャッシュの流出があったにもかかわらず売れ残った場合は費用計上されないわけです。もし期首よりも期末の棚卸資産の額が増えていればその分だけキャッシュは流出したのに費用計上されていない金額があるということになり、この場合営業キャッシュフローのマイナス要因となります。

逆に期首よりも期末の棚卸資産の額が減っていれば、減った分の金額はすでに前期以前にキャッシュが流出したもので、今期にキャッシュが流出がしたものではありません。したがって今期にキャッシュの流出がないにもかかわらず費用計上されていることになるので、その分営業キャッシュフローのプラスの要因となります。



営業キャッシュフローを増やすには

鍵は資金の流出入を伴わない項目

営業キャッシュフローが多ければ、借入金に依存せずに新規投資を行え、また借入金の返済にも回すことができます。では営業キャッシュフローを増やすにはどうすればいいでしょうか。すでに述べてきたとおり営業キャッシュフローは税引前当期純利益に実際に資金の流出入を伴わない項目を加減して求めます。このため仕入債務など実際に資金の流出しない項目の金額を増やせば営業キャッシュフローは増加し、売上債権など実際は資金が流入していない項目が増えれば営業キャッシュフローは減少します。ということは仕入債務や売上債権に対する取り組みの仕方によって営業キャッシュフローを増やすことが出来るのです。それでは詳しく見ていきましょう。

売上債権と仕入債務の額を改善する

売上債権についてですが、売上債権の比率を下げれば営業キャッシュフローを増やすことが出来ます。売上げを伸ばしていても売掛金などの売上債権ばかりが増えてしまうと、手元に現金がなかなか入ってきません。いかに現金販売の比率を上げ、売掛金の回収期間を短くするかが営業キャッシュフローを増やすポイントの一つです。

次は仕入債務についてです。仕入れ代金の掛け(後払い)の比率を上げれば営業キャッシュフローを増やすことが出来ます。支払いまでに猶予があるのでその間現金が留保することになり、営業キャッシュフローの増加につながります。まずは上記の2つのポイントが営業キャッシュフローを増やすために重要になります。

棚卸資産が増えないようにする

3つ目は棚卸資産に関してです。すでに上記でも述べましたが棚卸資産が増えれば期末に資産計上されてしまうので、実際に資金の支出があったにもかかわらず費用には計上されないため、営業キャッシュフローを求める式で増えた分をマイナスにしなければなりません。したがって棚卸資産が増えるだけ営業キャッシュフローにはマイナスになるので、適正な仕入や在庫管理により棚卸資産が増えないようにすることも重要です。棚卸資産は増えすぎると陳腐化により値引きや売れ残りといったロスが発生して営業キャッシュフローだけでなく直接利益を下げる要因にもなります。

営業キャッシュフローの改善案
  • 掛けによる販売の比率を下げる
  • 掛けによる仕入の比率を上げる
  • 棚卸資産が増えないようにする



当期純利益を増やすには

当期純利益の改善が営業CFの改善に

ここまでは営業キャッシュフローを増やすためのポイントについて見てきましたが、そもそも営業キャッシュフローは税引前当期純利益をベースにしています。ということは当期純利益をあげるための施策をとれば営業キャッシュフローを増やすことにもなるわけです。それでは当期純利益を増やすにはどうすればいいのかについて見ていきます。

本業での収益を改善するには?

当期純利益を増やすなら1つは本業で利益を稼ぐことです。では本業で利益を稼ぐにはどうすればいいでしょうか。まずは売れる商品やサービスを開発し提供することです。他にもブランド力向上、差別化などにより価格競争力をつけることも重要です。企業の強みを活かせるような形で新事業の開拓を進めていくことも大切です。コスト低減や生産性の向上によりコスト競争力をつけることも大事です。販売戦略でお客をひきつける事などで売上の拡大を図ることも重要です。本業の利益を増やすために重要なことをまとめると以下の通りとなります。

本業で稼ぐには
  • 新商品や新サービスの開発
  • 差別化やブランド力向上により価格競争力をつける
  • 新事業の開拓
  • コスト低減、生産性UPによりコスト競争力をつける
  • 販売戦略により売上を引き上げる

在庫管理の改善

2つ目は適正な在庫管理です。商品を売りたいときに商品の在庫がないと販売機会をロスしてしまうので、在庫を全てなくしてしまうのはデメリットも大きいのですが、在庫が多すぎて売れ残りが発生すると、値段を下げてでも在庫を処分しなければならない事態にもなりかねません。そうすると利益率の低下へとつながってしまいます。また商品が販売されるまで資金は回収されないので、あらたな商品の製造や仕入れに係る運転資金を、借入金などで調達しなければなりません。適正な在庫の量の見極め、売れ筋に絞った仕入れを行うなどして在庫が増えないようにすることも大切です。

有利子負債・人件費・営業費の削減

3つ目は有利子負債の削減です。短期借入金、長期借入金、社債、転換社債などの有利子負債を削減することで支払利息の負担を軽減することが出来ます。

4つ目は人件費、営業費の削減です。業務の改善や改革、情報化システムを取り入れることなどにより、少ない人員でも効率的に営業業務をこなせるような体制作りをすすめていきます。これにより人件費・営業費の削減をはかります。

当期純利益を改善するには
  • 本業での収益力を上げる
  • 適正な在庫管理
  • 有利子負債の削減
  • 人件費・営業費の削減




※参考資料
決定版 ほんとうにわかる経営分析
キャッシュフロー経営の基本
誰でもわかるキャッシュフロー会計のしくみ
決算書 読解力の基本が身につく88の極意
[新版]経営分析の基本がハッキリわかる本
経営分析入門―ビジネス・ゼミナール


※実践編
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最終更新日 2018/01/07
公開日 2006/11/27




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